20250122(水)
もしもコロナがなかったら?
▼毎年この季節になると月刊ロゴスの「冬企画」で、雪降る街への旅取材が恒例になっている。はじめての旅は、郡上での田んぼデイキャンプ。地元に住む3家族と雪が積もった田んぼの上にテントを建てて、ソリ遊びやBBQやたき火を楽しんだのが、2014年のことだった▼それ以降も冬を探す旅は続く。秋田県横手のかまくら作り、群馬県水上の犬ぞり、岩手県西和賀の雪合戦などなどなど。そして、2025年は北海道北見でのカーリング体験がテーマとなる。あの「ロコ・ソラーレ」の街なのだが、空港から電車で移動して北見駅に降りたって、いきなり度肝を抜かれた。郵便ポストの上にカーリングのストーンがのっかっていたのだ。ふつうに。あまりにもふつうに。かくも、カーリングが街に溶けこんでいるだなんて。実際に、居酒屋でも、道の駅でも、どこにでも、ロコ・ソラーレのポスターやサインがあって、いかに彼女たちがこの街のシンボルであり、愛されているかが伝わってくる▼そんなロコ・ソラーレは「グランドスラム」と呼ばれる世界16強が集う戦いのため@カナダだったのだけれど、日本のレベルは相当に高いのだそう。同大会にエントリー資格を持つ(つまり、世界16強内!)のにもかかわらず、ある理由により、その大会には出場しなかったチームと偶然にもカフェでいっしょになったりもした。がんばっている人には絶対に言えない言葉なので(がんばれ)と心の内でエールを送る。4日間の滞在中、日増しに、ロコ・ソラーレはもちろん、カフェでいっしょになったチームも、というか、カーリングそのものを応援したくなっていった▼応援といえば、翌日に訪れたキャンプ場誕生秘話にもエールを送らずにいられない。素晴らしきキャンプ場が多い北海道にあっても稀な、街の灯という絶景が楽しめる「サウスヒルズ」。その始まりをオーナーが教えてくれた。「絶景を売りにするレストランへの土地の売却を考えていたんです。でも、コロナ禍になってしまって、そのレストランから〝買えない〟とキャンセルがあって。しばらくしたら、3密とかの影響でアウトドアブームになったので、よし、キャンプ場をやってみようと。だからここ、親父とふたりで2年かけた手作りのキャンプ場なんですよ」。ぐっときた。僕らが訪れた日も貸切イベントが開催されるなど、「サウスヒルズ」は人気のキャンプ場となる。幸運なことに、雪の少ない今年だからこそ使用できた区画は、このキャンプ場ならではの絶景を雪景色といっしょに味わうことができたりもした。もしも、コロナがなかったら? おそらく僕らは、このキャンプ場とは出会えていない▼東京に戻っても〝もしも、コロナがなかったら?〟な出来事が続く。コロナ禍をきっかけに、主人公ふたりの男女が出会う映画『サンセット・サンライズ』。脚本が宮藤官九郎でロケ地のひとつが気仙沼とくれば、劇場で観ないという選択肢はない。帰京後、すぐに行ってみた。ぐっときた。とくに、南三陸の食の再現と、気仙沼の美しすぎる夕景と、物語のクライマックスで描かれる芋煮会での言葉たちに▼そして、来週はスクリーンではなくリアルに気仙沼旅だ。ディスタンスを気にせずに旅できるのは、やっぱりうれしい。映画『サンセット・サンライズ』のなかで登場していた「どんこ汁」や「あざら」という郷土料理が食べられたら、もっとうれしい。かれこれ10年ほど気仙沼には行かせてもらっているというのに、このふたつの料理はまだ味わったことがなかったからだ。まだまだ、世界は未知であふれているのが、ことさらにうれしい(唐澤和也)