20240517(金)
上らから2番目のフランク②

▼さて、フランクである。上から1番目のフランクは、眉毛まで完全フル装備の金髪時代であった。当時はスマホ登場前で写真の1枚すら残っていないのが残念ではあるのだけど、黒髪時代とは別人のようにフランクに接してもらったのだった。そして、上から2番目のフランクが、いまだ。バイクの教習所、かつ、おっさん限定のフランク。そもそもなぜ、バイクの免許なんぞを取得しようと思ったのか。その理由は、とある漢字ひと文字にさかのばらねばなるまい。「風」である▼10年ほど前から、年末に親しい人に来年の目標漢字ひと文字を聞くようにしていて、もちろん自分でも考えるのだけれど、2022年は「風」だった。2020年以来のコロナ禍および緊急事態宣言への反動なのか苛立ちか。「風」の前年は「旅」だったから、よっぽど自粛生活的日々が苦手だったのだろう。それでまた、まんまと叶うのだから、漢字ひと文字作戦も侮れない。なんと、「旅」の年は小笠原諸島の父島・母島へ行くことができた。取材で。そして、2023年。最高に「風」な出来事が、北海道の利尻島・礼文島を原付バイクで旅したこと。これまた取材で。風を感じる旅だった。初日以外ずっと雨だったのに、ずっと楽しかった。2年ほど前から都内を自転車で疾走する快感を知ったが、その延長戦上にもある楽しさ。しかも、自転車と違ってペダルを漕がなくても進むって! まぁ、当たり前の話なんだけど、利尻島・礼文島の僕にとってはヒャッホーであった。そして、決める。「そうだバイク、乗ろう」と▼というわけで、4月27日からバイクの教習所通いが始まる。講習を入れられるだけ入れまくった。その時期は、ゴールデンウィーク終わりでかなりのボリュームの原稿の締切があったので、スケジュール帳には教習所の授業を示す(B)の文字と、原稿書きなどを記したTO DO案件が踊る。バイク、原稿、バイク、原稿、バイク、バイク、原稿、原稿の日々。まるで、強豪校での部活動と進学校での勉学を両立するスーパーな高校3年生のようだった。でもしかし、そのスーパーな受験生は試験に落ちる。1回目の卒業試験で、落ちると一発アウトの一本橋で、落ちる▼もう落ちることは許されない。アウトドア雑誌の表紙&巻頭特集でバイクによる旅企画の日程が迫っているからだ。梅雨入り前の5月末に。必死だった。まるで、ホラー映画の主人公がゾンビたちの群れに突っ込んで行く時ぐらいの必死さだった。だったら、1回目から頑張ればいいのに。そう感じた読者とまったくおんなじ気持ちを抱きながら「うぉぉぉ!」と決死の覚悟で▼ゾンビ対策として、まずは苦手なポイントを徹底的に動画でチェック。具体的には「クランク」「一本橋」「スラローム」である。そのほかのポイントには「坂道発進」や「急制動」などがあるが、なぜだかそれらはすっとマスターできた。ふだんは極度の方向音痴というのに、覚えなきゃいけないコースもすっと覚えられた。路線変更ポイントとそのやり方を含めて。ゆえに残るゾンビが「クランク」「一本橋」「スラローム」だった▼ゲンも担いだ。試験前夜、食べると転ばないらしい梅干しを食べた(2個も)。当日は、アウトドア雑誌のクライアントであるロゴスのTシャツ、そのブランドカラーである緑色のスニーカーをチョイス。軽く捻挫していた左手首には、映画『THE FIRST SLUMDUNK』で宮城リョータが付けていた赤いリストバンドを忘れない。勝負ごとに強いリョータにあやかるべく、前日にわざわざ買いに行ったのだから。極めつけは、教習所のある駅のトイレだ。入口から突き当たると通路が左に90度の直角で曲がっていて、次に右に90度曲がるレイアウトになっている。まさにクランク。薄目に閉じて、バイクに乗ってるふうでイメトレをしてから2回目の卒検に向かった▼そして、本日。東京の鮫洲という街で免許の併記発行が終わった。YES、合格したのである。「一本橋」「スラローム」は、時間設定のポイントはあきらめて、やりきることを心がけたのがよかったのか。いや、担いだゲンがよかったのだろう。新しい免許証。あがる、口角とテンション。まずは、今月末の『Bike Bike Bike』という企画で、四国あたりを旅してきます(唐澤和也)