20240512(日)上から2番目のフランク①

▼フランク。調べてみると「自分の意見や感情を隠さず、率直に表現する人」という意味らしい。であるならば、いまの僕は人生で上から2番目ぐらいのフランクだ。とはいえ、僕が突然にフランクになったわけじゃなくて、初対面の他人からフランクに接しまくられている。ただし、限定あり。話しかけてくる人、くる人、すべからく、おっさんばっかり。場所も限定的で、バイクの教習所オンリーだったりする。人も場所も限定的とはいえ、なぜにおっさんたちは、僕にフランクに接してくるのだろう▼何度か記してきたけれど、僕は強面なので、基本的にはフランクには接してもらえないタイプだ。しかも、キレ澤というお恥ずかしいあだ名を拝命していた時期もあり、その頃は眉間が割れちゃうんじゃないかってぐらいの力感で、眉を寄せながら生きてきたタイプでもある。なのになぜ? 今週の講習前など、みんなが自分でつけるゼッケンがあるのだけれど、「ねぇねぇ、これどうやるの?」とフランク度MAXで話しかけられる始末。もちろん、初対面。「ワンタッチでとめられるところ2箇所をパチンとするだけですよ」と教えたのだけれど、「やって」とお願いされる始末。それぐらい自分でやりなよと思う前に笑ってしまった。初対面なのに「やって」って。この「やって」おじさんに限らず、このバイクの教習所では、初対面にもかかわらずフランクに話しかけてくる人が異常に多いのだ。なぜなのだろう?▼考察するために、人生で1番フランクに接してもらった時期のことを思い出してみる。あれは、30そこそこの頃。出版界の師匠、占部さんがSTARTという編プロを構えていた時期で、僕は社員のひとりとしてお世話になっていた。占部さんはもちろん、先輩ライターの小沢コージさん(自動車評論家)、ほかのスタッフもアルバイトの子も、みんながおもしろくて大好きな職場だった。仕事内容も然り。フリーランス時代からお世話になっていた媒体である「週刊プレイボーイ」や、残念ながら廃刊となってしまったが「BART」という雑誌などは継続してやってもよかったし、フリーランス時代はツテのなかった小学館系の仕事も増えていった。そして、「週刊SPA!」。占部さんが同誌出身だったおかげで、アマチュア時代から好きだった媒体にライターとして関われるチャンスが増えていったこともうれしかった▼ただひとつ、START時代に苦手だったのが、タイアップと呼ばれる仕事である。タイアップとは、広告仕事と記事仕事の中間のようなもの。中間なのはギャランティ面でもそうで、広告主であるクライアントを主語とすると広告よりは安く宣伝ができるし、雑誌あるいはそのページに関わるライターなどのクリエイターからすると記事ものよりもよかったりする。ある意味で、ウィンウィンってやつなのだけれど、まだ30歳ぐらいの若造だった僕には、嫌で嫌で嫌な仕事だった。理由は簡単で、クライアントの言い分や言い方が〝なぜに、そんなに上から目線で偉そうなんだよッ(怒)!〟だったから。いや、いまだったらわかりますよ。クライアントには偉そうにする権利があって「だって、お金を払っているからだよッ(怒)!」ということなのだろうと思う。でもですね、重ねが重ね、若造だった僕は何度かタイアップ仕事を重ねるうちに〝うん、向いてない!〟との結論に至る。でもしかし、STARTは好きだ。やめたくはない。さて、どうする? 自問自答の末に選んだのが〝金髪にしちゃう〟であった。しかも眉毛まで金髪にするという徹底的なパツキンぶり。たしか、週末のうちに完全なる金髪にしておいて、月曜日の出社したタイミングでSTARTメンバーには初お目見えだったと思う。占部さんは目を丸くしたあとでちょぴっり悲しそうに苦笑いして、こう言った。「その頭じゃタイアップはできないね」。そうなのです。令和のいまでは想像しにくいだろうけれど、当時は、金髪=信用度が落ちる、だったのです。こちらは確信犯なので、内心でしめしめと舌を出す僕。そして、意外だったのが、金髪にした途端に初対面の人からフランクに接してもらえるようになったということ。そのフランクさは人生で上から1番目であった。というわけで、バイク教習の結果も含めて来週に続きます(唐澤和也)