20230805(土)
テンションの話

▼「締切と睡眠」なんて話を書いてしまったからでしょうか。現在進行形で真夏の締切天国中なのですが、睡眠だけは意地でも確保しようと、書いて寝て書いて寝る日々。ドラマ『アストリッドとラファエル3 文書係の事件録』も第1話から録画したもののまったく見る余裕がないのは残念極まりなくはあるのですが、締切を主語とするのならあら不思議。寝るのを我慢して無理していた頃よりも、確実にいい感じなのです。あまり好きな言葉ではありませんが効率的にも、そして、テンション的にも▼後者のテンションのほうは、締切未経験者にはちょっとイメージしづらいかもですが、それ前後のアップダウンはものすごいものがあったりします。締切前のプレッシャーと締切後の開放感。寝るのを我慢していた時代は、寝ていないから逆にテンションが高くなったりもして、締切前後のアップダウンを加速させていたのかもしれません▼そんな前提があった上でさらに、この締切天国を終えるまでは禁酒しようと決めたものだから、より少なくなっていくテンションにおけるアップダウン。いや、少ないというよりも、ご臨終時の心電図のようにツーとフラットでさえある気さえします。なにせ、どうしても飲みたくなったらノンアルコールビールと決め、各社のそれを軒並み制覇しちゃったほど。逆にいえば、どんだけ飲みたかったんだよって話でもあります▼その制覇でわかったのは、ノンアルコールビールってどの会社のものも、たいしてうまかぁないってこと。唯一、おいしかった記憶があるのが、昨年の真夏の締切天国時期に気仙沼で飲んだオリオンビールのノンアルコールタイプ。でも、この逸品は都内ではまず見かけません。もう無理か。砂漠でばたりと倒れる男のようにあきらめかけた時にたどりついたのが「よわない檸檬堂」でした。果汁10%なので、ノンアルコール飲料というよりもレモンソーダを飲んでいる気がしないでもないのですが、まさに酔わないけれども飲んだ気にはなれて、さらにテンション的にはツーとフラットでいられるというこの夏最高のノンアルコール飲料です▼ところが、人間ってやつは、なのです。テンションが安定しているならいいじゃんとの意見もあるかと思うのですが、アップダウンがないのが、ちょっと寂しい自分がいます。フラットって、少々つまんないかもしんない。そんなことを感じてしまう自分がどうしてもいる▼するとどうでしょう。こういうのも言霊というのでしょうか。言葉には出してはいないけれど、今週末、いやがおうにもテンションがあがってしまう出来事が起こったのです▼自宅から事務所への通勤時のこと。晴天時はいつもそうであるように、自転車にまたがり、ペダルに力を込めました。いつもと違うのは、左肩にわりと大ぶりなバッグをかけていたこと。事務所で作業したのち、午後からの打ち合わせの資料が多いので、それを持ち運ぶための大ぶりバッグでした。これまたいつものように、車道の左側を自転車で走っていると、脇の細い道から突然に、ダッシュしたサラリーマンが突っ込んできたのです。ギュッと右手のブレーキを握りしめる僕。これがいけなかった。前輪がロックし、勢いを急に殺された自転車は、まるで柔道の巴投げでも決めるかのように運転手をぶん投げたのでした。もしも、その時の様子を真横から見ている人がいたら、もはや美しいレベルで自転車に投げられる様を目撃できたはず。一方の当事者である僕は、ブレーキを握りしめた瞬間から、テンションはあがりまくり、アドレナリンが全開でした。この1ヶ月ぐらいのフラットなテンションが嘘のように▼幸い、スリ傷程度でケガすらしなかったのは、あまりに運動神経が衰えていて、自転車巴投げになすがままだったからなのかもしれません。突然のダッシュサラリーマンも、圧倒的無傷、かつ、「すいませんでした!」のひとことも「大丈夫ですか?」の言葉もなく走り去って行ったのには、別の意味でテンションが下がったのでした。それにしても、ここまでの出来事ではないにせよ、やっぱり多少のテンションの上げ下げは必要なのかなと感じている週末です。なにごともその塩梅が大切なのかもしれませんが(唐澤和也)