20230706(木)
雨の利尻富士

▼雨に濡れても大丈夫なように。事務所から自宅への帰り道に、風に揺れていたのはプラスチック製の短冊でした。ひらひらと揺れるそれに書かれていたのは少年少女たちの真っ直ぐな願い。「9びょうだいになれますように」(陸上をやってる子、しかも100メートルとかの短距離走?)「プロ野球せんしゅになれますよう!」(野球人気が復活しているのか? WBCの影響かも?)「すみっこぐらしのにんぎょう」(ん? どういうこと?)。最後の短冊の言葉だけ、意味が想像できず調べてみると「すみっコぐらし」という人気のキャラクターなんですね。これを短冊に書いたキッズの望みは、その人形が欲しいってことなのでしょうか。それってクリスマスの願いのような気がしないでもないですが、明日は七夕です▼雨に濡れても大丈夫なように。十数年ぶりにレインウエアを新調しました。人生初登山が3000メートル級だったという暴挙の際に「登山の三種の神器は、レインウエア、靴、バックパック」と教えてもらった時以来のこと。バックパックもいままでの30リットルでは足りそうもないので、45リットルのものを購入。道具を揃えている時点でワクワクしつつ、目指したのは、通称・利尻富士、正式名称・利尻山。標高は1721メートル。道具だけではなく、3ヶ月前から週1回のランニングと、4キロの減量(ダイエットと呼べるようなおしゃれなものではなく必死。4キロの荷物が減るようなものなので)をして、北海道の離島が誇る百名山を目指したのでした▼結果、かなりの雨。レインウエア大活躍でした。今回の旅は、稚内前泊、礼文島1泊、利尻島2泊の計4泊5日だったのですが、それはもう見事に利尻以前利尻以後に天気は色分けされたのでした。つまり、稚内と礼文は快晴、利尻は2日ともが雨。とくに登山を予定していた2日目の雨はひどく、登っている我々に対して降りてくる登頂後の人々はこう口を揃えました。「山頂からの景色ですか? 真っ白!」。下山客にすれ違うたびに「真っ白!」「真っ白!」「真っ白!」と繰り返される言葉。よく落ちる洗剤の宣伝文句のようです。悩みましたが、7合目で下山することに決めたのでした▼山頂を目指せなかったのはもちろん残念ではありましたが、それでも楽しい旅でした。自分でも意外だったのは、原付バイクでの移動がことのほかおもしろかったこと。礼文島も利尻島も、東京の道路状況とはまったく違っていて、交通量がとっても少なくて、ひとこと漢字で記すのなら、長閑=のどか。それがよかった。ふたつの島は共通して風がとっても強くて、利尻島ではこの季節では異常に寒い15度だったので強風下での体感温度は頭の中が「真っ白!」になるほどに寒かった。それでも(もう、どうにでもしてくれー)とかニヤニヤしながら笑えていたのは、原チャリ移動に〝自由〟ってやつを感じられたからのような気がしています。まだうまいこと言語化できていませんが、東京での自転車生活を気にいっていることの延長線上に、その自由ってやつはあるような気がしています▼原チャリ移動では、もうひとつ印象的なことがありました。旅の目的のひとつがキャンプだったので、バックパックだけでなくかなりの大荷物を持って移動していた僕とカメラマンの関くん。すると、トレッキングなのか歩いて移動している人々がなにやらこちらに叫んでくるのです。最初は大荷物のうちのなにかを落としたのかと思いました。でも、違いました。「がんばれー!」と笑顔で声援を贈ってくれていたのでした。驚きでした。大荷物を原付で運んでいるおっさん2人って、応援したくなる存在なんですね。照れくさいけれど妙にうれしかった瞬間でした▼明日は、七夕です。星に願うはただひとつ。7月17日からの九州のどこか&佐賀県と7月20日からの鳥取県旅取材は晴れますように。PAPER LOGOS最新号の制作に、いよいよエンジンがかかり始めた週末です(唐澤和也)