20230124(火)
人生初佐賀の旅

▼M-1準優勝のさや香いわく「佐賀は出れるけど入られへん」そうですが、僕にとっての佐賀県は「出れるけど帰りたくない」ところでした▼毎度おなじみ月刊LOGOSの取材旅でのこと。2011年の創刊時からしばらくは初代編集長だったし、昨年の12月からは2度目にして3代目の編集長でもあるので、うすうすわかっちゃいたのです。どうやら、月刊誌って毎月締め切りがやってくるということを。毎月原稿を書くことは若干の憂鬱な気分ももれなく同封されますが、毎月やってくる取材撮影はおそらく楽しい。おそらくというのは、まだ2回目なので、そのうち気持ちの変化が訪れるやもではあるのですが▼3代目襲名以来、2回連続で旅企画だったのも楽しいと感じられた理由かもしれません。1回目は岩手県一関へのもち旅、2回目の今回は佐賀県のたき火旅。LOGOSのスウェーデントーチ(30センチぐらいの丸太に上から見るとプラスの文字のような切れ込みを入れたやつ。たき火アイテムとして人気。料理もできる)を製作している工場が佐賀県にあった縁から、高校生がスウェーデントーチを授業で作っていることを知り、彼らにも取材できたのでした。そのあたりの出来事は月刊LOGOSで書かせてもらうとして、本編では綴らないであろう、ちょっぴり不思議な出来事をこちらに▼人は自分と同じ誕生日の人と人生でいったい何人と出会うのか。「キム・ジョンイルと同じ誕生日」とラップしたのはZORNで、たしかにふたりは2月16日生まれで同じ誕生日だけれども、そういうのじゃなくて。著名人がありならば4月22日うまれの僕だって、名優ジャック・ニコルソンや宿敵読売巨人軍の中田翔と同じ誕生日だったりはする。そうじゃなくて、ふつうの市井の、正月にまったりしすぎてソファで足を組み替えただけであわやギックリ腰になりそうになったりする一般ピーポー(僕の実話)と同じ誕生日だったことは? あろうことか、人生初佐賀県の最初の夜、一度にふたりの4月22日うまれと出会ったのでした▼きっかけは夜めし。地方に行くと飲食店街的なところの日曜の夜が静かだったりします。金曜と土曜の夜にはしゃいじゃって日曜日は家でじっとしてたいのかなぁと想像するのですが、佐賀県の伊万里もそんな感じ。翌日の夜には佐賀牛を食べてみたかったから、和食系居酒屋かなぁと少し静か目な飲食店街的なところをぐるっとまわって、雰囲気よさげなお店の扉を開いてみました。残念、すでに満席。でも、店員さんがいい人っぽかったので和食系居酒屋でおすすめの店はあるかとあつかましくも聞いてみると、わざわざ4人組の常連客に「どこか知ってます?」と尋ねてくれたのです。そんな4人組のうちの男性がおすすめしてくれたのがMというお店でした▼カウンターだけのMの店内は、なかなかにいい感じ。大将の地元話がおもしろいうえに、「鯨の胃袋」「呼子のイカ」(旅の後半で呼子に行く予定だったので我慢。食べなかった)「佐賀牛のホルモン炒め」(翌日は焼肉の予定だったけど我慢できず。おいしかった)「茶碗蒸し」(超絶美味!)などのメニューも充実していたのでした▼そんなこんなでいい夜が始まっていたのですが、しばらくするとこの店の接客を担当しているママさんが突然に現れたのです。彼女いわく、今日は日曜日で暇だろうからゆっくりしてようと思ってたと。なのに、常連さんから「Mをおすすめしといたから男性客ふたりが行くと思うよー」と連絡をもらって〝出勤〟したと。話の流れで僕らにMをすすめてくれた男性とママさんが同じ誕生日だと知り「いつですか?」となんの気になしに尋ねると「4月22日」とママ。「嘘でしょ!」と驚いた僕のリアクションに驚くふたり。同じ誕生日だと告げるとママさんと大将も「嘘だぁ〜!?」となり、「本当です!」と人生初佐賀県で運転免許書を提示させられたのでした▼ちょっぴり不思議なそんな夜を終えて、ホテルに戻る前にコンビニへ寄ろうと信号待ちをしていた時のこと。偶然にも、満席のお店でMをすすめてくれた男性がすぐそばに立っているじゃありませんか。つまり、もうひとりの4月22日うまれメンです。こちらにはまったく気づいていませんでしたが、幸いにもこちとら酔っぱらいなので、勢いで話しかけると、まださっきのお店で飲んでいるけれどタバコが切れて買いに出たタイミングだったとのこと。Mを教えてくれたことのお礼を伝え、実は僕も誕生日が同じなんですよと告げると、この日何度目かの「嘘でしょ!」。おっさんふたりで盛りあがり、なぜだか携帯でツーショット写真を撮ったりしたのでした▼人は自分と同じ誕生日の人と人生でいったい何人と出会うのか。僕は武蔵小山時代にひとり遭遇しているので、これで3人目となった記念すべき夜でした▼さてさて、運転免許証といえば、さや香の漫才では「佐賀県の運転免許証返納者はタクシー料金20%オフ」とのくだりがありましたが、佐賀県の唐津で乗ったタクシーの運転手さんいわく、運転免許証返納者割引があるのは本当で、さらに緑の用紙に記入して運転手さんに提示すると5割引になることもあるらしいですよ。以上、入られないはずの佐賀県潜入ルポでした(唐澤和也)