20230106(土)
115歳のコンビニ散歩
▼車がほとんど走っていない道路を3人で歩く。56歳の僕。32歳の甥っ子長男。27歳の甥っ子次男。僕の手には懐中電灯が握られている。暗がりを照らすというより、たまにしかこない車にこちらの存在を知らせるためのアイテムだ。甥っ子のふたりは、財布すら持っていない。甥っ子弟にいたっては、夏とは言わないが秋ぐちのような軽装だ。僕の母、甥っ子たちにとっては祖母である人が、今年も張り切ってくれたおかげの正月のごちそうで満腹状態の僕は、おとそ気分でこんなことを聞いてみた。「散歩行く?」「うん」「うん」。そんなわけで、『呪術廻戦』でいうところの帳が降りたような、まっ黒な愛知県豊川市の田舎道を歩いていたのだった▼3人足して115歳の散歩の目的は、いちおうコンビニ。別になんの目的もなくただただ歩いたってよかったけれど、せっかくだからと彼らのおじさん(つまり僕)が言い出した。四つ角になると甥っ子ふたりがジャンケンをする。弟が勝ったら右、兄が勝ったら左、あいこだったら真っ直ぐをゆく。そして、コンビニにたどり着けたらゴール。それだけのルール。実家から歩いて5分のところにあるファミリーマートは、一旦避けようとそっちと逆方向に歩き出したのが、夜の7時ぐらいだったと思う▼兄は仕事を頑張っているようだ。「今年はねぇ、出世する……予定!」と歩きながら笑う。付き合っている彼女との結婚も考えているからだろう。弟も仕事を頑張っていることは知っていたけれど、彼女が東京にいることをはじめて知った。というか、つい最近の12月も浅草でデートしていたらしい。「ウソでしょ?」「いや、本当」「本当じゃなくて……言ってよ。東京でも会おうよ」「そっか」と弟が笑う。結論的にコンビニにたどりつけたのは、歩き始めてから1時間ぐらい経ってからだった ▼兄弟でもぜんぜん違うところがおもしろい。彼らが高校生だった時に、それぞれのタイミングで別々に僕が住む東京に遊びに来たのだけれど、兄は服が好きだから下北沢に行きたいと言い、弟はゲームが好きだから断然秋葉原だった。おもろしい。人はむしろ違うからこそおもしろい。ご兄弟よ、また東京にも遊びに来てね。そして地元豊川でも男同士でまた散歩しようぜ▼というわけで、謹賀新年あけましてハッピーニューイヤーです。僕は、本年初の旅出張で北海道です。世の中いろいろありますし大変な思いをされてる人たちが一日も早く「ふつう」に戻れますようにと願いつつ。本年もよろしくお願いします(唐澤和也)