やまたび 台湾旅行編
その一 初海外でひとり旅
弾丸ツアーであろうと日帰りツアーであろうと、とりあえず「日本から出る!」ということが、一番大事なことだった。それも、ひとりで。
数ある海外の中で私が選んだのは、直行便で行ける台湾の首都・台北だった。
二〇一八年三月。搭乗した羽田空港十三時五分発の便は、途中で乱気流に巻き込まれてジェットコースター並みに上下するなど、けっこうスリリングなフライトを楽しめた。おまけに発着が遅れ、台湾に着いたのは四十分遅れの十七時頃。手続きを終えて空港外へ出たのは十八時前だった。
幸いだったのは、入国の手続きがスムーズに行ったことだ。別室送りになって尋問を受け、挙げ句の果てに入国拒否されたらどうしようかとドキドキしていた。そんなこともなく、空港で一万円ほどを台湾元に両替し、駅に向かう。
日本の切符は紙製だが、台湾の地下鉄(MRT)ではコイン型のトークンを使う。これを自動改札機にタッチさせて中に入り、降りる時は自動改札機に投入する。運賃は安いので私のお財布にもやさしく、トークンは回収後に再利用されるので環境にもやさしい。私は紫色のトークンを手に入れ、ひとまずホステル最寄りの忠孝敦化駅を目指すことにした。
途中の乗り換えで駅構内のドラッグストアに寄り、持ってきそびれた歯ブラシとウェットティッシュを購入することに。棚を見ると日本の商品がちらほらと並んでいる。しかも、パッケージが日本語のままだ。なんだか不思議な感じがする。
買い物は海外に来てはじめてということで、めちゃくちゃ緊張した。案の上、レジのお姉さんに中国語でなにかを聞かれたが、さっぱりわからない。返事はどうしようかと困ったものの、外国人だと気づいてくれたのかとても感じのよい丁寧な接客をしてくれた。そのちょっとした親切が、心細さを感じていた私にはとてもうれしかった。しかし、感謝の気持ちを伝えたいがなんと言っていいかわからない。口からとっさに出たのが「THANK YOU」という、日本語でも中国語でもない英語だった。
(文/山岡ひかる/2020.6.08)