ぞわぞわ映画館
はじめに

 みなさんはテレビや映画のなかの誰かが失敗をしたり、恥をかいたりするシーンを見ると、なんだか自分までいたたまれない気持ちになってしまう「共感性羞恥」というものをご存知でしょうか?

 例でいうと、NHKのドキュメンタリー番組にジブリの宮崎駿監督が出演されていた時のこと。ある企業がゾンビの動きを見せながら「このCG技術があれば人間が想像できないような気持ち悪い動きができます」とプレゼンします。それを見た宮崎監督は「極めて不愉快」「生命に対する侮辱を感じる」とそれはもうめちゃくちゃに怒ります。凍りついた場の空気、怒りが滲む声音、苦い顔をする説明者。私はあの雰囲気がものすごーく苦手です。自分とはまったく関係ない話なのに、とても見ていられません。

  数年前に 『マツコ&有吉の怒りの新党』という番組で、この心理現象が共感性羞恥と呼ばれるものだと知りました。番組の調べによると、十人に一人が同じような経験をしているそうです。これって私だけじゃないんだ! と思ったことを覚えています。
 とはいえ、十人に九人の方にはよくわからないであろう、この感覚。言葉で説明するなら全身を引っ掻きまわしたくなるように『ぞわぞわ』する感じがします。
 この宮崎監督の話以外にも、ドラマや映画で下手くそな演技を見せられるのもぞわぞわしますし、素人のドッキリは無理している感じが、ぞわぞわの極みです。なので、そういうシーンになりそうな気配があると耳をふさぐか、チャンネルを変えて凌ぎます。

 映画でも同じことが言えて、SF映画やアニメーション映画は好きでよく見るのですが、というか映画自体大好きなのですが、ぞわぞわしそうな作品はさけてきました。邦画、とくに恋愛ものやマンガ・アニメ原作の実写映画は見たらヤバい、という予感があったからです。
 なのに、思いついてしまいました。あえて、ぞわぞわしそうな映画を見て、自分がどのように感じたのかを書くという企画を! うわ、嫌だなぁ〜と思う反面、仕事の経費で見られるのはラッキーだとも思いました。

 本来ならば映画館でポップコーンをむしゃむしゃ食べながら最新作を見る予定だったのですが、このご時世ですので楽しみはもうすこし先にとっておくことにして、二〇一八年から書き溜めていたものなかから選りすぐり(?)の三本を更新していきます。ぜひ、一緒にぞわぞわしていただけたら幸いです。
(文/山岡ひかる/2020.7.07)