ぞわぞわ映画館
『アナと雪の女王2』編

 街中が陽気なクリスマスソングで溢れかえる、二〇一九年の十二月の半ば。夕方、横須賀で仕事を終えた私は、京急線に乗って川崎駅で下車しました。家から来やすいこともあって、買い物などでよく利用します。駅前を歩いていると、店先で三人の警察官に取り囲まれたおっちゃんがなにかをわめいていました。うーん、さすが川崎。

 向かったのはお気に入りの映画館、チネチッタ。五百三十二名が入れる大スクリーンを含めて十二のスクリーンがあり、シートも広々&ふかふか。レーザープロジェクターやすぐれた音響システムを導入しており、映画を見るならここ!と決まっています。しかも会員になって五回鑑賞すると一回無料という、うれしい特典付き。

 おっと、本題は映画でしたね。今回は『アナと雪の女王2』(以下、アナ雪2)を見ることにしました。もともとこの企画は共感性羞恥からはじまったわけですが、「ぞわぞわ」をもっとひろげたら恐怖や感動、さらには寒さに至るまで「ぞわぞわ」なのでは?とある時ふと思ったからです。そして公開しているなかでもっとも話題で寒そうだったのが、アナ雪2でした。

 実は前作も見ているのですが、正直いって私には全然刺さらなかったので、内容はほとんど忘れました。ただ、あまりにもあんまりなラストに「なんじゃこりゃあああ!」と松田優作ばりに狼狽えてしまったのはよく覚えています。日本の歴代興行収入ランキングは堂々の第三位。『君の名は。』や『ハリー・ポッターと賢者の石』よりもヒットしたという(私の中では)驚愕の事実。
 でも、もしかしたら二作目だったらおもしろいと感じるかもしれません、いやおもしろくあってほしい、おもしろくあれ!

 案内されたシアターは二百九十席ありますが、平日なので人はまばらでした。私は空いている映画館がけっこう好きです。なにより静かだし、両サイドの肘置きも使い放題ですから。

 では、国内興行収入は百三十三億円、アニメーション映画として全世界興行収入歴代一位(二〇二〇年三月時点)を記録したメガヒット作品のあらすじを簡単にご紹介しましょう。
 前作から三年後、アナとエルサは姉妹で王国を治め、幸せな毎日を送っておりました。そんなある日、エルサは不思議な歌声を聞くようになり、その歌声に導かれて姉妹たちは旅立ちます。そして辿り着いのは、魔法に包まれた森。なぜ、エルサは不思議な力を持って生まれてきたのでしょうか?

 アナ雪2を見た感想ですが、すっごくおもしろいわけでもなければ、すっごくつまらないわけでもない、一番困るタイプです。とは言っても、前作よりはおもしろいと思いました。未知の旅は、この先になにがあるんだろうというワクワク感があります。また、ミュージカルならではの歌と、CGを駆使した美しい自然がたっぷり見られます。
 二人のプリンセスもかわいらしく、エルサにいたっては氷の魔法を使って、常人には到底叶わないようなことを軽々とやってのけます。たとえば、氷の力で竜巻を消滅させる、大シケの海の中で敵と闘うなど。もはや、マーベル作品でも一人前のヒーローとしてやっていけるくらい強いです。

 だけど物足りない。いったいなにが物足りないのかちょっと自分で考えてみたのですが、肝心のシナリオがお粗末な感じがします。同じディズニープリンセスが登場する作品でも『塔の上のラプンツェル』は大好きです。キャラクターそれぞれに感情の起伏や葛藤があり、自らの意思があって動いている感じがするのですが、アナ雪2ではそれをあまり感じられません。
 たとえるなら、画家クリスチャン・ラッセンの絵が近い気がします。彼の作品にはとても美しい海と生き物が描かれていますが、ただそれだけで絵に奥行きを感じられず、「きれいな作品だね〜」で終わってしまう。アナ雪2はそれに似ていると思います。

 そんななかで断トツよかったのは、アナの恋人・クリストフが歌うシーンです。いい意味でダサいひと昔前のMV風で、はじめて見るのにひどく懐かしい気分になります。しかも、この楽曲を提供しているのは私が好きなアメリカのロックバンド、ウィーザーではありませんか! これにはとてもびっくりしました。エンドロールでやっと気がつきましたが、どうして誰も教えてくれなかったのでしょうか?
 ちなみに、劇中のシーンをウィーザーが再現したツッコミどころ満載のMVも存在します。

 今回は寒いぞわぞわを求めて映画を見ましたが、思ったほど寒いシーンはありませんでした。基本的には美しい秋の森がメインで、物語が佳境に入ってやっと氷河が出てくる程度。前作の方が雪や氷のシーンが多かったような気がするので、ぞわぞわ度(寒い)は星三つの評価となりました。
 わかりやすい内容にはなっていますので、ファミリーで映画を見る際にもちょうどいい一本となっており、ウィーザーが大好きな人にもおすすめしたいです。

ぞわぞわ度(寒い)
★★★☆☆☆☆☆☆☆

(文/山岡ひかる/2020/8/03)