こもごも雑記
「左翼スタンドは漆黒に染まる」

 横浜DeNAベイスターズの本拠地、横浜スタジアム左翼のビジター外野席は漆黒に染まっていた。ベイスターズのチームカラーである青と白が圧倒的に多いなかの紅一点ならぬ黒一色。ことさら異質さが際立っていた︙︙。

 セ・リーグとパ・リーグの間で行われる交流戦も終盤となった6月17日の土曜日。前日の時点でベイスターズは2位につけていた。交流戦の優勝を争うゲームとあって、チケットは軒並みソールドアウト。事前にチケットを入手していたベイスターズファンの私は球場へ赴いた。なんてたってチームの調子がいい! 当然ながら足取りも軽くなる。

 ベイスターズの先発は大貫で、対する千葉ロッテマリーンズはカスティーヨというドミニカ出身の選手だった。
 2年前の交流戦の時もロッテとの試合を見たのだけど、その時にレギュラー出場していた助っ人外国人の2人、本塁打を打つと寿司を握るレアードと、広瀬アリスに似ているマーティンは退団していなくなっていた。プロの世界はとてもシビアだということを改めて思い知らされ、少し寂しい気持ちになった。

 シートに座ってまず目を奪われたのが、漆黒に染まる左翼ビジター外野席だ。9割9分のロッテファンが、選手のユニフォームとお揃いの黒い服を着ている。何度もハマスタで野球観戦をしているけれど、ここまで統一されているのはまず見たことがない。ふつう、もっとバラバラになる。それだけで十分異様なのだが、試合がはじまるとめちゃくちゃでかい声で応援歌を歌い、曲によってはぴょんぴょんとジャンプしまくる。声や動きのすべてが揃っていて、応援のプロフェッショナルたちが集まってスタンドを埋めているとしか思えない。

 威圧感に飲まれそうになるが、こちらも負けじと声援を送る。不思議だなと思ったのが、ランナーがでて牽制をするとブーイングが起こることだった。いや、牽制ぐらいするだろ! やられっぱなしもムカつくので、佐野が死球を受けた時に思いっきりブーイングをしておいたけれど。セ・リーグではこういうことはなかった。とても独特な応援の仕方だと思う。

 反対に気に入ったのがロッテの応援歌で、とくに内野手の中村奨吾の応援歌「しょーご しょーご なかむらしょーご」がしばらく頭から離れず、帰宅後も口ずさんでしまうほどだった。あまりにも気になるので曲について調べ、原曲の『よっしゃあ漢唄』(パチンコ『花の慶次~斬』のテーマ曲で歌っているのは格闘家・角田信朗)を歌詞が覚えてしまうくらい繰り返し聞いた。

 試合は3回の裏で宮崎の2ランを含む6得点。日中に行われるデーゲームで過酷な暑さであったが、ベイスターズファンは大喜びである。この宮崎という選手は34歳という年齢ながら、打率・本塁打・打点のいずれもトップ3にランクイン(7月6日時点)しているすんごい選手で、コロコロとした見た目から、「プーさん」というあだ名で呼ばれている。本塁打を打つと手をあわせてお花が咲いたようポーズをとり、それもまたかわいい。試合は点を重ねて10対1で勝利した。

 翌日もロッテのエース・佐々木朗希との一戦に勝ち、迎えた月曜日。大雨で中止となった北海道日本ハムファイターズとの振替試合が組まれていたのだった。これで勝ったらベイスターズの交流戦初優勝が決まる!というとても大事な試合で、私もやることそっちのけで駆けつけたかったけれど、その気持ちをなんとか抑えつけて仕事場にとどまった。

 その試合は負けたものの、最終的に得失点率差によって同率1位の巨人、ソフトバンク、オリックスを抑えて見事ベイスターズが交流戦初優勝を果たしたのだった。欲を言えば、文句なしの1位になってほしかったけれど、優勝には変わりない。というか、大事なところで負けるのもベイスターズらしいと言えば、ベイスターズらしい。8月、9月も野球観戦する予定なので楽しみにしている。
(文/山岡ひかる/2023.8.1)