からの週末 2020605(金)
2ヶ月ぶりの平和軒・チャーシューワンタン

▼まぁまぁ長いこと「誰かに読んでもらうため」の文章を書いてきたので、完全にそうでない原稿というのは書けない気がする。一時期、日記的なものをつけていた時も絶対に誰にも読まれないのに、いるはずもない読者にカッコつけて書いている自意識過剰っぷりを(唯一の読者として!)気づいてしまい、めちゃくちゃ恥ずかしかったし▼というわけで、100%は無理だけど、誰かにではなく自分に向けての比率が高い、いわばメモ的なことを書けたらなぁと思う。日々の忙しさのなかでいろいろとすぐに忘れてしまうから▼とかいいつつ暇だ。すっごく暇だ▼日々の忙しさのなかでなんか一切なく、自宅蔵書のコミックスでいえば「鬼滅の刃」「アオアシ」「達人伝」「寄生獣」「ブルージャイアントシリーズ」「かくかくしかじか」「バガボンド」などなど、すでに何周もしているものを再読し、あまつさえ号泣してしまい、しばらく余韻に浸りまくれるほどに、暇だ▼とはいえ、例のKKJS(緊急事態宣言)が解除されるまでは、ありがたいことに適度に忙しかった。例年の3月4月5月は「未来の貯金的仕事」(旅もの企画で地方に出張するとか)が多く、締め切りのある仕事が少なめなのだが、わりと大きな案件が3つも重なっていて(それがたまたまこんな時節に重なってくれて)いやはや本当にありがたかった▼てなわけで、KKJS中の月〜金はまぁまぁ働いて、土日完全オフという、なんていうんだろ、憧れのライフスタイルだった▼いや、憧れはいいふうに言いすぎた。正直に言うと<え? 完全週休二日制の一週間ってこんなにゆるいの?>と思った▼他人の忙しい自慢ほどムカつくものはないと自覚しつつも、でもね、だってね、土日がずっと連休だなんて、たぶん、10年前ぐらいまでさかのぼらないとなかったと思う▼そうそう、その頃も暇だった。当時、メインの仕事だった週刊誌の連載が終わり、いま思えば燃え尽きなんちゃら気味で、ライター業を辞めて友達の実家のみかん農家を継ごうなどと妄想していた。完全に妄想で、いまだったら(農家の方をナメんなよ!)と自分で自分にツッコむ現実逃避だった。だって、その友達にはひとことも相談していなかったのだから。というか、いまだに言ってないから今更話したらめちゃくちゃビックリすると思う▼あれ? なんか違う。いくら自分のメモ的なものをとはいえ、なんだか書く前に思ってたのと違う▼この企画は週末に一週間を振り返って、振り返るだけじゃなく、次の週にもなんかが繋がればいいなぁと思った企画だったのだったのだった。にもかかわらず、振り返りすぎた。なんだよ、10年前って!▼というわけで、すっきりした話を▼職業柄なのか、性格の問題なのか、流行り目の言葉がうまく使えない▼たとえば、「あけおめ」とかが苦手だ。どうしても人前で言えないし、どうにも気恥ずかしくて書けない▼最近では「経済を回す」が、その手の流行り目の苦手言葉だった▼その言葉の言わんとするところはわかるし、大切なことだとも思うのだけれど、言えないし、書けなかった▼ところが!ですよ▼KKJS解除により、大好きなご近所中華・平和軒のチャーシューワンタンを食べて<そっか!>と、すっきりしたのです▼2ヶ月ぶりの黄金色のスープと2ヶ月前と変わらぬホクホクなチャーシューに、はっきりと感動さえさせられたのだが、その時の感動は、経済を回す→だから自粛ムードがまだ漂ってるけど外食するよ、などという理屈っぽいものではなく「食べてぇ!」という自分の欲望がなによりも先にあったのだった。つまり「経済を回す」という言葉が自分にとっては〝上から目線〟や〝言い訳〟な語感があったから苦手だったのだなぁと、すっきりしたわけでございます▼というわけで、来週も、手洗いや3蜜には気をつけつつ「食べてぇ!」ものが食べられますように(唐澤和也)