からの週末20201115(日)
謎のメモと4月の泣き虫なおっさん
▼『湯を沸かすほどの愛』『(サンドラ・ブロック)しあわせの隠れ場所』『ノッキン・オン・ヘブンズドア』『リメンバー・ミー』『アイ・アム・サム』『この世界の片隅に』『ロッキークリード炎の宿敵』『ライフ・イズ・ビューティフル』『ホタルの墓』『万引き家族』『ニューシネマ・パラダイス』『クレヨンしんちゃん 大人帝国の逆襲』……って、なんだこりゃ。薄手のインナーダウンの左ポケットから出てきたメモなのだが、まったくもって記憶にない。映画のタイトル群ということはわかるけれど、ふだんの好みとは違う作品がかなり混じっていることに謎が深まる。しばらく記憶をたどってみたけれどタイトルからは名探偵となれそうにもないので、薄手のインナーダウンを前回いつ着たかを思い出してみる。そうか! 春とはいえ夕方は寒さを感じる4月の頃に赤いコレを羽織ったのだったのだったと思い出した▼してみると、やっぱり、弱っていたんだなぁ、俺。いつ赤い服を着ていたかをきっかけに思い出した記憶は、その4月の頃はコロナの影響で完全に自粛ムードで、とにかく時間がたくさんあって、そこそこ凝った自炊料理にハマったりしつつ「泣ける映画」というキーワードを打ち込んでググった映画群がこれだったのだ。一部、その頃誰かにすすめられた映画も混ざっているけど、泣きたかったんだなあ、俺。自営業の後輩が「変わっちゃいますね、世の中が」と、さすがにへこんでいる様子をなんとかしたくて「こんな時代だからこそ、変わらないものに俺は興味があるけどね」とか精一杯の強がりの言葉を返したけど、なにカッコつけてたんだよって話です。その実、弱ってたんだなぁ、俺。だって、泣きたかったんだもの▼とはいえ、このリストの映画を全部見たかっていうと、そうでもなくて、どんな心境の変化があったのか、2本しか見た記憶がない。その2作品が『この世界の片隅に』と『ロッキークリード炎の宿敵』。両方ともおもしろかったけれど、「泣ける映画」と看板に偽りがなかったのが『この世界の片隅に』だった。先週のNHKの朝ドラ『エール』で号泣どころか、漢字の語感でいうと剛泣だったように、『この世界の片隅に』も大剛泣だった。それと同時にこうも思った。なぜ、映画館で流行っていた時に見ようともしなかったんだろう?映画館で流行っていた時は無理だったとしてもDVD化されたタイミングは見る機会はいつでもあったろうに……。調べてみると、映画の公開は2016年11月よりで、DVDの発売は2017年の9月15日だった▼この4月に、精一杯の強がりで「変わらないものにこそ興味がある」という趣旨からすると反転しているけれど、コロナ禍という経験を経て自分のなかで一番変わったものは<世間で流行っているものへの否定>から<世間で流行っているものへの興味>だったりする。からの週末でも書いたように、あの木村拓哉様さえも否定していた若い時期(というか、この春のコロナ禍までそうだったんだから若くもないですね)、正確に書くと若い時期からずっと続いていた「否定」が「肯定」ではなく「興味」に変わったことが自分としてはうれしく、それこそ興味深い。たとえば、ある映画が流行っていたとして「興味」を持って見て「否定」するのも「肯定」あるいは「絶賛」するのも自由なのだから▼まぁ、なにを当たり前のことを大声のようなトーンで書いてんだよって話ですが、要は自分で見聞きする前からなにを偏見に満ち満ちてやがったんだ、かつての俺よという反省です。というわけで、来週こそ『鬼滅の刃 無限列車編』を観に行きたいと思う週末です▼余談ですが、なにかしたいことがあるっていいもんですね。「仕事にはやりたいことと、やらなきゃいかないことと、やれることがある」とは劇団時代からの師匠のある夜のパンチラインで「やれることがある=プロフェッショナル」との補足が印象的でした。あれあれ? 余談がさらに余談になっちゃったけど、なにを最後に言いたかったかというと、ありがたいことに超繁忙期につき「やらなきゃいけないこと」がマックス状態ではあるので別の意味で泣きそうにはなるけれど、謎だったメモのおかげで4月のことが思い出せて<仕事があるって有り難い>と再確認できたのと、あと、ふっと(仕事じゃないけど)やりたいことが思い浮かんで奥歯が笑う感覚です(唐澤和也)