からの週末20201025(日)
10年ぶりの病院と海賊王と仲間の話

▼歯医者以外で10年ぶりぐらいでしょうか。今週は病院に行ってきました。それも火曜日と金曜日の2回。以前の週末でも書いた、7月のPCR検査を受けた時期の超微熱(37度)の時はもちろんなかなかに立派な熱が出た時ですら病院には行かず、とにかく睡眠とビタミンC作戦で乗り切ったというのに、そもそも丈夫なことが数少ない取り柄のひとつだというのに、奥さん、こいつは事件です▼でもまぁ、実際はまったくもってたいしたことがないので、心配してくださった奥様、ご安心ください。病名「外耳炎」、原因「耳の触りすぎ」。耳の触りすぎで外耳炎になるのは子供に多いそうで言われてみればたしかに夏ぐらいから耳を触るのが癖になっていてそのうちカサカサしてきて余計に気になって触るという負のループが続いていた。それが突然、日曜の朝に右耳の聞こえが悪くなり(閉耳感というらしいです)、月曜日も様子をみたけれど改善されそうもないので、火曜日に通院したというわけ。処方された耳薬(目薬をさすように耳にさす。耳が洪水になったようでちょっと怖い)との相性がよくなかったようで金曜も病院へ行ったのだけれど、幸いなことに痛みはほとんどないので仕事にもほとんど支障がない。子供に多いと聞かされてちょっと恥ずかしかったけれど、なにごとも〝度がすぎる〟というのはよくないのだなぁとあらためて再確認している週末です▼てなわけでたいしたことはないとはいえ絶好調ではない今週だったのだが、時期的には超の付く繁忙期なので、ちょっと前までの自分だったら、たぶん病院には行かずに無理してでも仕事を終わらせることを最優先していたと思う。年齢なのか、スタッフと一緒にやっているいまの環境なのか、コロナを経て思うところがあったのか。いま思いついた3つのこと全部がつながっている気がするけど、今回の僕の選択は「助けて〜!」だった▼ひとりでやると3日ぐらいかかるであろう締め切りのある仕事を、うちの山岡と後輩ライターKくんに「助けて〜!」と手伝ってもらったのだった。結果、ちょっとだけ締め切りをすぎてしまったけれど、それでもことなきを得た時は、彼らの手助けにありがたいなぁと感謝しつつ(あぁ、こういうことだったのね!)と妙な納得感があった▼なにを納得したというのかというと、ライターとしてはインタビューを中心に仕事をしているので、〝人の言葉を預かっている〟ような感覚がたまにあったりする。あぁ、これは大切な言葉だとはわかるのだけれど、その人が語ってくれた真意のようなものをいまの自分では完全には理解できていない気がして、預かっておこう、いまはわからなくてもいつかわかるかもしれない、そんな感覚▼たとえば、10年前ぐらいのチームラボの猪子さんの言葉で預かっていたのは「自分の力を過信しすぎ!」と笑ってダメ出しをされた時のもの。当時はヘビースモーカー時代だったので、同じく喫煙者だった猪子さんと取材終わりの喫煙所で雑談していた時の言葉だった。ある漫画家のインタビュー企画が始まった頃で、その人とその漫画がいかにすごいかをふたりで盛り上がっていて(猪子さんも漫画好き)、で、調子に乗った僕がなにかを言った流れでの「先輩! 自分の力を過信しすぎ!」だったと思う。猪子さん自身は僕のこともその言葉も覚えていないと思うけど、僕にとっては(あぁ、この言葉は預らないとダメなやつだ)だった。当時はひとりで仕事をしているどの付くフリーランスというのもあったけど(俺が俺が!)感の度がすぎていたのだと思う。猪子さんの言葉を聞いても(え? フリーランスってそういうものじゃないの?)ぐらいの感覚だったけど、いま思えば、あの天才がなぜに〝チーム〟で仕事をしているのかという話だった。その時の雑談ではなくインタビュー本編では、漫画『ワンピース』の好きなところは、「ルフィが仲間と旅を続けてるところ」とチームの大切さを語ってくれてもいた。いまならはっきりとわかる。あぁ、あの頃の俺は自分の力を過信していたなぁ、お恥ずかしい限りです!と▼でもですね、こういう〝気づき〟みたいなものって、人によるんですよね、たぶん。50歳をすぎてようやくひとりじゃなにもできねぇ的な当たり前のことに気づくのは遅いよなぁ、遅すぎてお恥ずかしいよなぁと思いつつも、たとえば、今回助けてくれた後輩ライターのKくん(26歳)あたりが、「やっぱり、チームワークですよね!」みたいな丸いことを言った日には、よせばいいのに「俺は違うと思う!」とか説教しそうだから。若い後輩には自分の力を過信しまくって尖りまくってほしかったりもするから。それでまた、そういうひねくれた思いを抱えて1周しつつ、もし猪子さんにインタビューする機会に恵まれたのなら、まだ若かった活動初期から、なぜにチームにこだわったのかは、ものすごく聞いてみたかったりする週末です(唐澤和也)