花瓶を買った日
▼花瓶を買ってから2日がすぎた。人生初花瓶だ。なぜにそんな柄でもないことをしたかと言えば、もらった花束がうれしすぎたから。2日前、9月20日の土曜日に友達の長男が式をあげた。友達本人の結婚式はもちろん参列したことがあるけど、友達の〝子ども〟が招待をしてくれたのは人生初。彼からしてみるとお父さんの友達だし、親戚のおじさんみたいな存在だったのかもしれない。けれど、〝おじさん〟はうれしかった▼友達の名は、関くんという。このコラムのようなものにも頻繁に登場する、友達にして、仕事仲間にして、あとはなんだ? ひとことでは言い尽くせないが、古いヒップホップ用語で言うと「マイメン」ってやつだ。あっさりとひとことで言えちゃったけど、かれこれ30年ぐらいの付き合いになる▼長男は31歳。ということは、関くんと知り合った頃に彼が生まれていたということ。関くんはカメラマンなわけだが、実は奥さんもカメラマンだったりする。そして、式の主役の長男も。東京六大学に入り、就職活動もしていたのに、なぜか写真を学びたいとフランスへ渡った。コロナ禍だなんだといろいろあったけれど、いまでは立派なフォトグラファーだ。ちなみに、関くんちの次男は、動画のカメラマンだ。大人になってから関くんや関家のみんなと知り合えてよかったと心底思う。たとえば、いま長男と同じ歳で愛知県から上京して友達になっていたのなら、東京ってやっぱりすごいんだなぁとは思いつつも、すごすぎて引いていた気がする▼結婚式には、雑に撮れるデジカメを持参していた。式の主役のふたりはみんなが撮ってくれるだろうから、僕は関くんと奥さんと次男と長女を撮りまくろうと思っていたのだ。とくに関くんを。いつもは撮る人をこんな一日ぐらいは撮ってあげたかった。下手くそでもいいから。関くんは粋でいなせでシャイな人だから嫌がるかなぁとも思ったが、カメラを向けると意外にもノリノリだった。酒が入っていたとはいえ、その意外さが、だからこそぐっときた。うれしいんだなぁ。そう思いながらシャッターを切った。原稿を書くというのは線だけど、写真は一瞬で、その一瞬に永遠が詰まっているのかもしれない、なんてことを感じたりもして。そういえば、主役ふたりの出会いの場が、僕と関くんが好きで昔から通っている店だったと聞いて、一瞬がつながって線になるんだな、なんて、ライターみたいなことを思ったりもして▼人生初花瓶はガラス製で色をささず主張が控えめなのが気に入っている。土曜日にもらった花束が月曜日も事務所で咲いているのを見ていたら、ふと気づいたことがあった。土曜日の写真、いったい誰に渡せばいいのだろう? 粋でいなせでシャイな関くんは、酒が抜けたいまとなっては恥ずかしがってあの日の写真は見たがらないような気もする。じゃあ、長男? いやいや、主役のふたりはほとんど映っていない。さて、どうしよう。しばらくは、自分であの日の写真を眺めていようと思う。親戚のおじさんのように(唐澤和也/2025.09.22)