からの週末20210925(金)
チップス燻製チーズ風味ほか1111円

▼漫画でしか見たことがないような、全身タトゥな豪の者を見た。今週月曜日のことだった。半袖から延びる両腕に刻まれた絵柄はもちろん、スキンヘッドに磨き上げられた後頭部にまで見事なタトゥがあしらわれている。うしろ姿だった。となると、お顔はどうなっちゃってんだろうとワクワク感がとまらない。5メートル、3メートル、1メートル。近づく、豪の者との距離。高鳴るワクワク感。そしてついにすれ違いざま、なるべく自然にチラ見すると、それはもう真っ白なマスク姿だった。残念。でも、そりゃそうか。豪の者でもコロナ対策は欠かせない。そういう時代のそういう国に僕らはいま生きている▼ところで、怒涛の日々が始まっている。毎度おなじみ400ページ弱のカタログ制作開始のゴングがなったのだった▼業界では台割と呼ばれる、カタログや書籍などの設計図のようなものを作ることが最初のステップ。たとえば雑誌なら、エクセルを使って表組にして、巻頭特集は何ページでタイトルはこんな感じなどと、テキストから全体像を想像できる設計図、それが台割▼だがしかし、400ページで、しかもカタログともなるとそうはいかない。仮に1ページ平均4アイテムが掲載されているとして、1600個もの製品名をテキスト化したとしても、その量のあまりの多さにゾッとするだけで、全体像なんて想像できやしない▼そこで、出番なのがスコッチ社の「はってはがせるスティックのり」。製品名どおりに貼っても剥がせるところがポイントで、写真付きの製品情報を専用の台紙に貼ったり剥がしたりしていく。専用の台紙は、A4を横位置にして見開き2ページ分の枠を作ったもので、たとえば左側の1ページに6個のアイテムを掲載する構成だったら(新製品を上にしようかな?)などと6個の写真付き製品情報を貼っていく。(なんか違うなぁ)となれば剥がして、また貼り直せるのがめちゃめちゃ便利だ▼とはいえ、この写真付きの製品情報が魔法のようにボンっと目の前に現れるはずもなく、該当する資料をプリントアウトし、製品ごとにひとつずつハサミで切るというアナログな作業が必要となる▼そのアナログ作業はうちの山岡が担当してくれているが、途方もない作業量で正直めんどくさいのか、毎年この時期になると彼女の機嫌が悪い気がする。一方で、年次を重ねるごとにスキルが上がってきており、各ジャンルごとにジップロックに収めるという仕分け方が、ほぼ完璧になってきているのがありがたい▼山岡からのバトンを受け取った私は、専用の台紙に「はってはがせるスティックのり」で〝テキストじゃなくて一目でわかる台割〟を考えていく。山岡の本当の気持ちはわからないので(途方もない作業量で正直めんどくさいのか)との想像で書いたが自分のことは(途方もない作業量で正直めんどくさい)と断言できる。めんどくさい。めちゃくちゃにめんどくさい。ただし、モノ作りのある種の真理というやつなのか、めんどくさい作業はやっぱり重要で、説得力やおもしろさの下ごしらえだったりもする。つまり、めんどくさいは決して無駄じゃない▼てなことはたしかに真理だと思うし大切なことなのだが、そんなことよりもいま気づかされた驚くべき事実は、山岡だけでなく、私の機嫌も確実に悪くなっているということ。人間ってやつは機嫌が悪い時にその理由を自分ではなく、外部に求めるものなのか。なんだか最近、コロナ禍のせいかみんながささくれだっていてこっちまでイライラするなぁと思っていたのだが、なんてことはない、この原稿を書いていて気づかされたのは、自分のご機嫌ナナメっぷりこそが各種イラだちの最大の原因ということ▼ただまぁ、思いっきり開き直ると、機嫌が悪くなるのはしょうがないですよね、人間だもの。でも、そういう状態が続くのはよくないですよね、人として▼というわけで、この原稿を書き終え終えたら「檸檬堂ハチミツレモン」と「ギネス」と「サッポロ黒ラベル」と「レモンビール」と「カルビー クラフトじゃがいもチップス燻製チーズ風味」をスーパーで買って帰ろうと思う。実は、先週末の仕事帰りにも購入したものたちで、とくに「カルビー クラフトジャガイモチップス燻製チーズ」はえげつなく美味だったからだが、トータルの金額が「1111円」で、それがなぜだか妙にうれしくて、ちょっぴりご機嫌だった。年末まで続く繁忙期には不機嫌な果実も実ってしまいそうだけれど、そんな時は1111円を買って帰ろうと思う(唐澤和也)